テラ・アーツ『ノラ』

★12月10日、d-倉庫
イプセンの『人形の家』、主人公はノラ。家族・社会との葛藤のなかから立つ女性像として有名なノラ。テラ・アーツ・ファクトリーの主宰、林英樹は、それ自体を描こうとしたのではない。むしろそのなかの混沌を描いている。それは、安スポンジを買い、それが銀食器購入につながる二人の女の会話、そして、太った入好亜紀が語るいまどき女の子的台詞、そして流れる言葉の断片に現れる。ただその意味が結果として、女性の自立に終練するように見えてしまうのは、一考の余地があろう。いずれにせよ既存のノラ像をどう解体するかを考えさせる舞台だ。それにしても、人形の家と聞くと、弘田三枝子が流れるのは、歳なんだなあ
★写真は麹町のボタン屋のデイスプレイ。考えてみると、ボタンはファッションと身体を抑え、制御する存在。裸身と着衣の間の鍵でもある。ボタン付けを男性でもできるモードにしたのは、女性の特権を奪うことではなかったのかという妙な思いに捕われた
志賀信夫