菊島延幸

暗転から光がさすと下手上に何か足らしきもの。その下は坂、板が立て掛けられ、上に人がいるようだ。かなり急な傾斜からゆっくりと姿を表す。この出だし、登場がいい。ゆっくりと降、伏し、壁に向かい、倒れる。緊張感がある。さらに中央で、横たわったまま手足を延ばす姿もきれいでひきつけられる。しかし整いすぎている。上手の籠との絡みが少し道具扱いに見えてきて、その中に入っても決して交わらないところから、弱く見えだした。途中から鳴り続ける武満的な音も舞台に合いすぎた。しかし発想と展開はかなり見せる。なぜ斜面なのか、籠なのかを自分に問い掛けながら、斜面と交わり籠と交わるつもりで対象を愛し、それが舞台に表れればいい。アイデアや設定、オブジェも決して単なるモノではない。舞台に載せる以上それは自分にとって、特別のものであるはずだ。そして斜面から落ちようと籠が壊れようと踊るんだという野放図さがあれば、モノ以上になり、愛がかんじられたかもしれない。
「匿名行為-ア・コガレ色」と題するこの舞台は、田中泯の桃花村に2000年から参加している若手の二度目のソロ。表情や立ったときの動き、丸くなる姿などあちこちに泯の影響は大だが、自分の踊りを求める意欲と発想に期待したい。
志賀信夫