工藤丈輝、藤間蘭黄、加藤啓

★11月24日キッドアイラック
ヒグマ春夫の映像、工藤丈輝の舞踏。ヒグマは映像自体よりもその投影に意味を見出だしているようだ。紗を何枚も配置して空間を作り、それによる映像の変化を楽しむ。さらにカメラを操作して映る姿と位置を変える。上手サイドと正面からの投影は、即興で踊るダイナミックな工藤を多層的に浮かび上がらせた。また蝶の羽の映像が工藤に絡む場面も美しかった
★11月25日
藤間蘭黄の素踊りによる2作。『四季の山姥』は伝統的な作品だが、見栄として前を見据える視線に力を感じた。次の『禍神』にもそれは通じる。ファウストを題材の創作はすべて一人で演じる意欲作。ヒダノ修一の太鼓、布による効果的な美術とともに、楽しく観せ、魅せる作品であった
★11月26日
加藤啓を知る人は少ないかもしれない。だが舞踏などの舞台美術でその極めて繊細なオブジェを見た人は多いはずだ。針金を組み合わせた中に小さな白い断片がいくつも下がり、鳥のイメージが重なる。実は大野一雄に師事し、七十年代に映画『O氏の死者の書』にも出演、何度か踊ってもいるが、絵画、美術、そしてパフォーマンスの世界に入った
ピエロの格好をして、作った繊細なオブジェを使って鳥のサーカス、トンボサーカスと題して、一つ一つ動かして見せるパフォーマンスは、まさに児戯のようなのだが、次第にこれが心地よくなってくるから不思議だ
★写真は加藤啓のオブジェ
志賀信夫