松下正己はやばい、いい

★11月21日
松下正己、ソロ、中野・スタジオサイプレス
踊りをきちんと自分の中にいれて、そこから引き出してくる。そういうシンプルな作業ができずに、思い込みだけで自分の踊りを踊っている気になっている踊り手が多いなか、きちんと踊りと向き合う踊り手を発見したときの喜びは筆舌に尽くしがたい
この日、そんな思いを抱いたのは、松下正巳の踊りに引き込まれたからだ。
天狼星堂をはみ出して数年。沈黙のなかから踊りだした。オリヴィエ・メシアンの同じ曲でソロを踊り三回目
無音で踊りだしたときに確信した。これはいい踊りになると。音楽に対する意識も純粋観客からは消えていく。踊りがあればよい、体があればよいのだ
前半二十分はまさに特筆すべき舞台だ。特にホリゾント前でつっぷした姿の美しさはまさに至高
以降の展開も見せた。一部リフレインが気になったが、最後、両手を広げて十字架のように立ち続ける姿、手を高く上げていく姿、いずれも音楽に潜む宗教性と相まって、心に響いた
このようなストイックな営みを続けること、これがいま舞踏、踊りの世界に求められている
★写真は日暮里の看板建築
志賀信夫