目黒大路、黒田育世

★11月16日
目黒大路「この物体」d倉庫
グループ・ヌードを結成しているが、今回ソロ。これがいさぎよい。無音、姿も上半身裸にスラックス
真上からの光、サスだけで場所も一歩も動かずにその場で踊り続ける前半が圧倒的
後半は自分の声、テクストは佐々木克己、とともに舞台を周遊するように動き、照明とともに横たわり、あるいは這うように動く
自分の踊りへの決意表明でもあるのだ

★11月17日
黒田育世BATIK「花は流れて時は固まる」にしすがも創造舎
初演は本当に衝撃的で、この作品を超えるカンパニーはまだ日本にはないと思う。97年にベネチアで再演、そして今回とかなり改訂している。全体にパワーアップし、迫力と執拗さが増した。ただ基本構造は変わらず、飛び降りの衝撃、回り踊り続ける黒田の力、いずれも圧倒的
今回音楽もたたみかけすぎで、異質のものや、静寂が入るほうが、執拗な追込みがより際立つだろう
今回、声が新しい要素、といっても「ねえねえ」と泣き声叫び声だが、この「ねえねえ」は、むしろ上の場面を和らげる意味で最初は入れたのではないか。それが、執拗な追込みと同質になっているのは、もったいない気がした
また、見ながら、これも黒田のボレロだと思った。金森穣を振り付け、それが自分の作品に変化したともいえる、モニカモニカ、春の笠井叡振付けのラストのボレロなど、いずれも踊り続けて昇天し失墜する。いつかのインタビューで「体がばらばらになるまで踊りたい」(『表現者』誌)といった黒田の思いは変わらない。その姿勢が観客を撃つ
いずれにせよ、この作品を抜きに日本のコンテンポラリーダンスは語れない
志賀信夫