上杉満代、田辺知美、解体社

★11月2日
隔月で一年踊る上杉満代。今回はさらに見応えがあった。何気なく舞台に入るようですぐにその場の空気を変えてしまう。前回はすべて削ぎ落とした極みを踊った。しかし今回、タイトでありながら芳醇。ホリゾントの壁に立つ姿、斜め後ろから照らした光で浮かび上がる上杉は絵画以上といえる不思議な光景を見せてくれた
気負いや策略、魅せようという意識がなく、素直にしかし踊り手の意識のみで立つ姿は感動的だった
★11月7日
解体社は新たな時代を進もうとしている。それは一人の若者の目だ。冒頭、舞台中央観客寄りに立ち投げ掛ける眼差し。それは凶い目だ。一重の大きくはない目が、我々を不安に落とし込む。演技ではなく、ただその目が舞台にいるのだ。手を頭の後ろにやる奇妙なポーズを二回。あとはゆっくり体を動かし、顔を向けるだけ。しかし丁寧なゆっくりした動きも目が離せない。それはあの目があるからだ。その後、紙に書いた文字を読み。紙を裂く。
一方で鎌倉がトランシーバで言葉を送る
彼が去ると激しい音で目の開いた面とともに暴れる男。なるほどあの目に対応するにはもはや人の目ではダメなのだ
そしてベージュの下着的いつもの衣裳の女性、テープの物語を股間で聴かせる女性、水商売の自分を語り、やがて女装する男などが登場する
そしてまた最後にあの目が観客を見据える。二つ前の芝居から解体社の舞台に登場し、存在を示していたが、今回はそれを強烈に認識せしめた。若者の名は本間良治。
流れる言葉を超えてこの目が迫る。12月の解体社公演が楽しみだ
★11月6日
田辺知美はまさに舞踏である。
暗い照明、奥に敷かれた布団に横たわる女。白いパジャマを身につけ、動かない。やがて少しづつ体を延ばし、曲げ、緊張が伝わってくる。それは寝姿でもポーズでもない。右を地面にして九十度視点をかえると、立ち姿で踊っていることがわかる。壁に体を寄せて捩るなど、いつもにない展開も含めて、舞踏は立つことを希求しつつ自分の踊りを探すことだとすれば、田辺知美の世界はまさに舞踏の横道だ。
眠らぬ眠り姫の寝業は果てしなく素晴らしい

志賀信夫