トロイメライ、リゾーム的なM

★8月6日
上村なおかは新しい世界に踏み出した
上村は丁寧な踊りのなかに、アンジェリックな匂いを漂わせる踊り手である。しかし今回はその要素を極力抑えて、ストイックなある暗い世界を中心に据えた。といっても暗い情念ではなく、踊りが浮き上がるのを極力廃して、全体に重心を下げ、密度を求めた
渡辺久美子も奇抜な動きではないが、引き付けるものがある。斎藤栄治は巧みな動き。それが抑えたトーンでデュオ、ソロ、トリオで絡み合う。
意識として沈む感覚が足裏から大地を感じ取り、その奥まで沈み込めるか。それが地につき、さらにわずかに飛翔すると、対照から沈む意図がさらに際立つように思う。日暮里d-倉庫にて
★8月7日、吉祥寺シアター
東野祥子も新しい世界を作ったといえる
主宰するBaby-Qの公演は、カジワラトシオと組んだことで振付け演出にリアリティが出た。といって、冒頭から妊婦ダンス、荒木志水らの巨乳コンビ、動物のきぐるみ、目光り軍団、目黒大路らの女装トリオなど、自由な発想が入り乱れる。しかしそれをカジワラの人間的な音が通奏低音としてまとめている。次々と表れる奇想に目を奪われながら、舞台は終演を迎える。暗いモチーフ、重いイメージでもそうなりすぎないのが、東野の特質。トヨタのころはそこに借り物感があったが、今回落ち着いたように思える。通常東野がメインで踊らないと不満があるはずだが、今回感じなかったのも、いい作品である証。関西、ドイツ公演を経てさらなる成長がありそうだ見るべき表現者だ。
★写真は茅場町のなぜか拘束された花壇
志賀信夫