プロペラ

野田秀樹芸術監督就任記念公演としてロンドンから呼んだ男だけの劇団プロペラ。『ベニスの商人』『真夏の夜の夢』を上演。ベニスを見た。
牢獄という設定、男が女を演じ、法学者に化けるなど、ズラシの仕掛けがあちこちにあり、面白い。ユダヤ差別と思えるほど執拗にシャイロックを攻撃し、キリスト教、西洋中心主義に見せつつ、黒人混じりでそれを演じつづける。そして最後には「どっちがユダヤだ」と。仏教徒にはリアルではないが、キリスト教徒にはビンビンくるのではないか
シャイロックの娘役の役者は真夏ではパックを演じたらしいが、声とキャラに野田が重なって見えた
台詞が多いので字幕でなくイヤホンガイドにしたのだろうが、ニュアンスが伝わったかどうか。例えば繰り返される、このユダヤ野郎という呼び掛けは、訳では配慮から省かれたのか。すると作品の毒と本質が薄まりはしないか
志賀信夫