今野真弓、MSA

★今野真弓は超ストイック。25日、武蔵小金井アートランドの久しぶりのソロは、金属音のなか上手から横たわって進む。この質感にまずひきつけられる。そしてようやく立つと執拗な足踏み。45分の舞台の大半を足踏みで作る。舞台中央で下手を向いて淡々と踏む。手は擦り合わせるような動きなどが少し入る。やがて前を向いて足踏みを続ける。そのときに今野の今日の踊りは足踏みだと判明する。ポストモダンの動きや行為というコンセプトではない。自分がいま舞踏として人に出したいのが足踏みという素朴な舞台。照明も最小限ながら踊りに寄り添い過剰ではなく最大限に生かした。再び卵から孵化しそうな舞踏の息吹を感じた
★神楽坂ディプラッツと日暮里d倉庫でMSAコレクションが始まった。その一日を見た
相良ゆみはバレエのスキルがありながら大野一雄に舞踏を学んできた。出の捩られた身体、二場の登場などいずれもインパクトがある。しかし二場の目隠しとトゥがすぐ消えてしまったのは、なぜなのか。そして三場の動きは追求する自分の踊りの居場所が見えていないように思えた。それならむしろ、踊れなかった最初のソロ公演の大野慶人のように立ち尽くしてもいい。そうすれば踊らない自分を、何も持たずに見いだす可能性があるのではないか
★同じ企画の林慶一のソロ。自分のこだわりと欝屈をそのまま舞台化したようなストレートさは魅力でありマイナスでもある。ハードコアやメタル系の音楽がいつしか子守歌になるように、自分のこだわりをストレートに出し続けると、それはミニマルのように環境音と化す。カオスを表現するためには、そこに浸るだけではだめなのだ
★このように問題作が目白押し。作品づくりを作家同士がオープンに議論した成果という点でも注目に値する
★写真は敬愛する大山美信展。日本橋に移転したカネコアートギャラリー。土曜まで
志賀信夫