★三月の舞台から

◆3月の舞台で、書いていない舞台評など

★3.5、解体社@カンバス。観客を誘うなどして舞台を開こうとするのか。しかし魅力は閉じた部分だ
★3.6、踊りにいくぜ、東京@吉祥寺シアター。最初にプロモビデオを流したために、舞台が予想されたのは残念。しげやんのはっちゃけた魅力に拍手
★3.8、田村泰二郎『とんぼうお』テルプシコール。役者・舞踏家による真摯な取り組み。どこか突き抜けた部分が魅力
★3.13、入江平の舞踏ソロ@テルプシコール。冒頭の男装的なストイックな横たわる踊り、次の着込んだ女の舞踏らしい暴れから、最後の上半身裸の立つ姿までひき付ける。中盤のワルツは曲を変えてみるといいかもしれない
★3.14、白井剛ブルーライオン東京芸術劇場小ホール。白土を敷いた静謐な舞台は白井の美意識を具現して見事。鈴木ユキオ、寺田みさこというハイレベルの素材を生かさず壊す勢いがほしい。ただ寺田がトゥで後向きに上手から下手に横切る足と土の軌跡は奇跡的に美しい。嗚呼
★3.14、群々『あたらしい世界』アサヒアートスクエア。観客を巻き込む実験的舞台は成功したと評価する。詳細は『TH』誌(アトリエサード)にて
★3.15、輝く未来@吉祥寺シアター。若手の振り付けを生かし作り出すというコンセプトで、それぞれのシーンは見せるが、全体を大きなコンセプトや装置でまとめる、あるいは解体する必要があるように思う
★3.19、東京シティバレエ+コンテンポラリー@ティアラこうとう。バレエダンサーをコンテンポラリーの振付家が振付ける意欲的な企画。公募で選び会場のどこでも使えるなど、自由度も高い。大橋可也、山田せつ子などが挑戦。魅力的だった。詳細は「東京ダンススクエア」サイトに
★3.20、イデビアンクルー『コウカシタ』@あうるすぽっと。高架下という設定。個々のダンスは見せるのだが、装置・設定以上のおもしろさは見いだせなかった
★3.21、平原慎太郎@セッションハウス。ノイズムで活躍した平原が女性ダンサー、美術家とのコラボ。作品前のエチュードとみて踊り、動きを楽しんだ
★3.21、矢野通子@シアターカイ。漫画という素材で弟子に作らせるという自由を与えているが、むしろ作らせないというハングリーを与えて、そこを超える人材を育てるべき。
★3.22、万城目純パフォーマンス@国立新美術館。歴史ある日本アンデパンダン展だが、インスタレーションはなかなか面白い。判子による干支の曼陀羅インスタレーションに舞と謡。万城目自身とダンサー等が踊る和のコラボ。
★3.22、梅田宏明@赤レンガ倉庫。ストリート系痙攣が特徴の梅田は今回、映像とワークショップによる女性三人、そしてソロ作品。ソロは光を駆使してきれいなのだが、体か感じられない絵になった。勅使川原やダムタイプなどで既視感がある。女性たちを振付けた作品はポストモダン的動きと梅田の揺れが混ざってなかなか面白い
★3.24、カッパッテ@ブラッツ。白井麻子振付けによる舞台は、なかなか踊れるダンサーが揃い意欲的。ただ見せ方、観客へどう伝えるかが難しい。次回に期待
★3.25、オルフ祝祭合唱団『マタイ受難曲ティアラこうとう。佐多達枝のバレエと共演前のコンサート。二台のオルガンが古楽的魅力を引き出した
★3.26、おのでらん@青山円形。水と油はマイムに新しい風を吹き込み、展開が期待されたが、解散、それぞれで活動する。ダンスにシフトし、ダンサーを交えた舞台が多いが、なかなか難しい。マイム、ミメーシスという言葉が示すように、何かを模倣して演じるところと、そうでないジャンルのダンスは重ならない

★3.27、高橋由希@大野舞踏研究所。大野一雄慶人に支持しているが、劇団tsumazuki no ishiで知る人も多いだろう。今回は初ソロ。ちょっと衣裳替えが多かったが、着物で後向きの姿は踊りというか演技というか、その存在感は尋常ならざるものがあった
★3.28、笠井叡+バティック@世田谷パブリックシアター黒田育世率いるバティックを笠井叡が振付ける。これは事件である。黒田はもともと舞踏への意識も強い。室伏とのデュオは遠慮しあって消化不良だったが、今回は黒田と笠井の世界が交じり合って何かを生み出す匂いが漂った。生けるオブジェとしてのカラス、赤と黒を基調とした舞台は一つの美意識に貫かれ、見応えがあった
ここに破綻や裂け目を忍ばせればというのは、望みすぎか
★3.28、岩渕貞太@横浜。ソロを依頼されて作って30分。それを女性に振付けて二つのソロ。コントラストは面白いが、それ以上に岩渕のオリジナルな感覚は伝わらない。頭で作った印象がある。体から染みだすソロが踊れるはずだ。まずそこを突き詰めてこそ、振付けが見える。ダンサー、振付家いずれにとっても、ソロは基本、自分の存在証明、レゾンデートルだろう
★写真は万城目純パフォーマンス@国立新美術館
志賀信夫4-B