大野フェス、横トリ、若尾伊佐子

大野フェスティバル2008が25日土曜日に幕を閉じた。今回は舞踏のみならずコンテンポラリーダンスなどさまざまなダンスで、屋外、艀など、バンクアート周辺、港横浜という環境を生かした企画が多く、楽しんだ。特に艀に船で登場した上杉満代は鮮烈だった。山崎広太も真っ赤な女装は初めて見せる姿。これはまたぜひ舞台で見たい。
10月25日の最終日は、プロジェクト大山が、女性グループならではのちょっと歪んだ関係性をダンスの動きのみで作り出し、半分パーティモードの観客をひきつけた。そして公募による「稽古の言葉」は、実に多様。子供を含めて一家の日常を描くパフォーマンスから伊藤虹の骨太の舞踏まで、短い時間にそれぞれの表現が溢れだした。
会場のバンクアートNYKは横浜トリエンナーレ会場でもあり、一階奥では勅使川原三郎のパフォーマンス(25日)。ガラスを敷き詰め、両壁にもびっしり埋め込んだ奥長の狭い空間で踊る。黒いシャツとバンツで踏み付けるガラスの音が鳴らし、静かなノイズと光の変化のなかでやわらかい踊りから、横たわり転がるなど、刺激的、尖った部分を見せる。聞けば、六時間動き続けるというから、凄い。この会場はヘルマン・ニッチの内臓儀式やマシューバーニーなどのパフォーマンス映像展示も多く、見応え満載。映像をしっかり見るには時間の余裕が必要だ。マリーナ・アブラモビッチにもパフォーマンスやその映像展示がほしいところ。
翌26日、世田谷パブリックシアターので「1945」は芥川龍之介の「藪の中」を元に戦後すぐの殺人事件と価値観の逆転した日本を描く。焼け跡を階層的に作った美術と大勢の群衆場面は見事。複雑な犯人捜しの物語が明解に示され、いい舞台に仕上がった。
日曜夜は若尾伊佐子のソロ。中野テルプシコールのコンクリートホリゾント、硬質な壁を背景に無音で踊る身体は以前より優しさを増し、身体との闘いから愛へと移行しているようだ。
志賀信夫4-B