佐多達枝、徳光加与子

★7月5日
すみだトリフォニーホールで、佐多達枝のバレエ『ヨハネ受難曲』を見る。
バッハを合唱とオルガンベースの管弦楽で聞かせ、その中で島田衣子などのより抜きのダンサーが踊る。特に構成された群舞と歌いつつ踊るコロス、それ以外の合唱隊も演じ動くなど、普通のバレエと合唱の関係ではないダイナミズムを獲得している。島田のソロはさすが、圧倒的な魅力。後藤和雄の休演は残念だったが、穴吹淳を始めとする男性ダンサーも見せた。そしてキリストを演じる堀内充はなお熱演が光る。
しかし全体の特徴は群舞の構成だろう。バッハのリフレインを形を変えて視覚化し、単調になりがちな部分にもダイナミズムを与えた。だがそれはベジャール的な肉体讃歌ではない。観客の大半はこれがバッハであることを忘れていったろう。舞踊と音楽の新たな関係を作り出し、これまでにないバッハの魅力を見いだした意欲作である。
★次に銀座の小さなギャラリー、プラットホームで徳光加与子のソロ。途中から見たのだが、母なる世界、母性と慈愛のようなものが染みだした。長年大野一雄の介護をするなかで、培われたものだろうか

★写真はすみだトリフォニーホール舟越桂作品
志賀信夫