ヤン・ファーブル、陽茂弥

★埼玉で4回目のヤン・ファーブル、『寛容のオルギア』は、いわばエロパロカオスだが、何かを眼前に突き付けられるようなところがある舞台た。冒頭のフェイクのオナニーも、ポツドールを知る日本人にはリアルの欠如と映るが、執拗さとチェスターフィールドの椅子との性交など、真似たモンティパイソン流の馬鹿馬鹿しさを敢えて二十年後にやるところが、別のリアルを獲得しているように見える

★陽茂弥は矢内原美邦、鈴木ユキオの舞台に出てきたダンサーで、舞踏家とのつながりもある。主宰公演を何度かやっており、今回はソロ『陽家のお墓』。挨拶をボードで示しつつ踊る冒頭からパぺットまで、緩いギャグのノリがいま一つ乗り切れない。動きはよく作られ面白く、ダンスの個性はあるので、それを生かした作品ができると思う。むしろユーモアを考えずにストレートに勝負してもいいのではないか。動きと言葉の対比は面白いが、それ以上の意味を獲得できない
なおサブタイトルには習作とかつけないほうがいい。他公演と重なった場合、観客は習作やワークインプログレスだと、次回と思ってしまう。本気で取り組んだ熱意が感じられる舞台なので、もったいない
なお、陽も中国読みすれば、ヤンかな。なら二人ヤンなのだが
★写真は陽のチラシから。絵、井上孝子
志賀信夫