追悼・大谷浩己

今日、3月24日、大谷浩己が亡くなった。明日友人たちと見舞いに行く予定だった。
大学時代に知り合った。本を契機に集った仲間だった。その後、グルメライター、食味評論家として活躍した。そのなかで、ワインを知るためにボルドーに暮らした。戻って書いた『フランスワインの十二カ月』(講談社新書)は優れた本だ。雑誌『dancyu』でも、いい文だと思ったら彼だったことが何度もある。丁寧で落ち着いた文体が魅力だ。最近は毎年出る『東京で最高のレストラン』の共著でも知られる。だが流行を追わない真面目な書き手だった。
フランスでワインのシャトーを案内してくれて、野外で飲んだシャンパン、ブラインド、ワイン当ての食事を思い出す。牡蠣の店にも行った。
映画学科理評コースで映画に滅法詳しかった。親しくなったのは、そういえば、鈴木清順のほとんどの作品を上映するオールナイトで文芸座地下に二カ月通っていて毎週会ったからだった。『東京味』という著書もある。残念でならない。
舞踊と食べもの、ジャンルは違うが、批評は反発を受けたり、簡単ではない。僕は彼の舌と文に敬意を抱いている。
冥福を祈る。
志賀信夫