くるみ、TARO賞、M-Laboratory

12月20日
松山バレエ団くるみ割り人形森下洋子が踊る別れの場面は、テクニックを超えた表現の世界があり、感動的だった
NBAバレエ団『くるみ割り人形』続けて見ると、松山の作品の独特さがよくわかる。芦笛の一人、佐藤香織が期待できそうだ
12月21日
●TARO賞
棚田康司が以前から気になっていたので見にいった。奇妙に痩せた女性の木彫は独自の世界がある。木肌の触感から病んだエロスが漂う。ヴァンジの個展には行けないかなあ。えぐちりかのブラジャーとパンティによる花園も魅力的だ。たぶん千枚以上のブラ、パンが食虫植物のような花を咲かせている。人食い花にも見え、ある意味、人を食った作品だ。もう一つの卵だらけの作品もおもしろい。物語とキャラを置いたところが今的で共感を得やすいだろうが、僕としてはそれはいらないとも思った。開発好明はやはりセンスがいい。発泡スチロールによる巧みな制作、工事用コードや蛍光灯など、ありモノから作り出す美術感覚のよさは、そのまま現代美術批判にも見える。風間サチコは現代の風景に過去を重ねるいま流行ともいえる作品だが、木版という素材と社会批判ととりうる精神が逆に新鮮に映る。横井山泰は奇妙なフォルムをカンバスに載せる感覚が目を惹く。今井紀彰は旅先の写真のプリントを組み合わせて曼陀羅的世界を作る。それを映像化した作品にアスファルトが隆起して裂
け目を見せるインスタレーションを組み合わせた部屋もおもしろい。たまたま作家トークの時間で、今井がアスファルトへの愛着と、これはもともと有機物の死骸であり、恐竜もイメージできると語ったのに対し、風間が、それでも大地をおおう近代化の象徴で自然とは反対だと指摘した意見の対立も、刺激的だった
もともと作家が自作を解説するのは、美術、舞台、文学ともに好きではなく、作り手がどんな意図があろうと、作品は自立すると思うが、たまにはおもしろい。
●M-ラボ
主宰の三浦宏之はテクニックと身体性を兼ね備えたダンサー・振付家。言葉の絡みとイメージの抽象化を狙った作品だが、目に残るのは、男女の絡み。特に女性が執拗に斎藤栄治に絡むところ。そういえば以前、このグループは男組だったが。
●写真は阿佐ケ谷駅前のクリスマスデコ

志賀信夫4-B