死の天使?いえ悪魔の血圧は?

ヤン・ファーブルの『死の天使』は期待違わずなかなか過激。キャパ千人以上の埼玉芸術劇場の舞台の上に百五十人の密室的舞台を作り、座布団観客がダンサーを間近で取り囲む。1.2メートル四方、2畳に満たない空間で踊るイヴァナ・ヨゼクはクロアチア生まれ。『死の天使』は彼女のための作品である。観客の背後の四方に映し出される映像はモンプリエの解剖学美術館。ヤンいわく世界最古でモンプリエ大学に付属しているらしい。ともあれその映像で踊るフォーサイスはパンツ一枚で腹も出ているが、奇妙な死の舞踏を踊る。イヴァナの生身と虚像はまさに生と死。フォーサイスが死の天使でイヴァナが悪魔とは思えないが、刺激的な舞台。ヤンは狭いギューギュー詰めの観客に死の腐臭を感じさせたかったのだろう。シャム双生児や歪んだ嬰児の死体や骨格標本などをぶつけながらも、だからこそ踊ることを強調するヤンの姿勢には、死の舞踏から生み出すものを求める偏執が感じられた
埼玉は売り切れ。高知と山口公演はこれからだ。まじ必見

●写真はプロデューサー佐藤まいみが、「不眠」ヤンにプレゼントした血圧計ではかるイヴァナ

志賀信夫4-B