若冲、吉兆、ボッティチェルリ

昨年三の丸尚蔵館に通った若冲の動植彩絵が、一挙公開のみならず新発見の作品展示もあるとあっては、やはり相国寺にいかないわけにはいかない。宝物殿建て替えを実は何年も待っていたのでした
土日は詰まっているため、平日の深夜バス往復というハードな旅。水曜駱駝壺中天小林裕子の銀塗りを見てF氏と味噌付緬をたべ、別れてバスに。その間に連絡とった人の勧めで太田神社の杜若。盛りをすぎかかりながらも清洌。そして並んで若冲。予定より早く入れる配慮もありながら、立ち止まらないでの声に苦笑。もっと広く作れ。まあ当初はここまでのフィーバー予測せんだろうなあと
120年ぶりの釈迦像との並びが売りだが、仏画は模写で、若冲の魅力は弱い。むしろ動植彩絵、彩は字が携帯にないが、これらの絵は、三の丸と照明も違い、益々くっきりと迫り、ああ、きてよかったあ
しかし見せ場はむしろ金閣寺の葡萄の間の再現。
中央床の間から生えた葡萄が左右の壁につながり、さらに右手下の小さな空間まで浸食。さらに左の違い棚の背景は、実は騙し絵。
軸を飾らせない過剰な床の間は若冲ならでは。墨を色に置き換えてみれば、モリスも真っ青の装飾技法など、見所満載。反対の芭蕉図は色を入れたら、TDLのチキハウスだ。これらの膨大な襖絵、壁絵のコンセプトには何か意味があろう。
改めて、おそるべし若冲
三度目の墓参りが写真。
出口のカフェのNYチーズケーキはシナモンがかかり美味美味。煙草を吸うため二席の屋外にいると、来る人の好奇の目。確かに黒づくめ、熱い京都の日差し、名刹の入り口で五十男がチーズケーキをついばむ図は、さしもの若冲とて思い浮かぶまい。
さらに丸紅のボッティチエルリ「美しき下ネタ」、いやシモネッタは、髪の表現は美しいが、後はやや凡庸。ただ後から描いたろう背景が、遠近表現がおかしいのがきにかかる。影が二重だし右上がりの線といい杜撰。
そしてたまたま東京から気の合う先輩?、I夫妻と、時間がないからと、駅ビルの吉兆へ。
松花堂も実は湯木の考案らしいが、旨い。やばい。胡麻豆腐と食前酒、椀のものの出汁にはまいった。濃いしっかりした味なのに、残らない。さらっと消える見事な味。当然炊きものもすべて、なるほど、出汁は効いているのみならず、次に食べるものを邪魔しない、というのが大事とわかる
薄味の鮭と揚げ物、何気なくふくよかな煮凝り、刺身もどれも、一級ですわ。飯と香の物お代わりして、デザート二種で六千円は高いといったらバチあたりまんがな。他の松花堂弁当イメージしたらおお違いどすえ。おそるべし
上のラウンジで舞台の若いキュレーターとさらに一献しバスに。
連絡して会えなかった方々すみません
金がないから深夜バス往復壱万円なのに吉兆とは愚か。しかし賭けに勝ち奢ってもらったんどすえ。なにかの吉兆になればなあ

前に来たときに行って堪能した鴨川へりの鳴瀬、野趣ある京料理のあそこもまた行きたいなあ。
朝帰り、昼仕事で夜は山本萌さんの「正面の衣裳」上映会とトーク。微細な動きに感動

志賀信夫