ナチョ・ドゥアト、神村恵Co.ltd

日曜にナチョ・ドゥアトのスペイン国立バレエと神村恵カンパニーを梯子したが、どちらも素晴らしいものだった。
ナチョ作品は「バッハへのオマージュ」として全編バッハのさまざまな曲で二十以上の作品・場面を踊り続けるのだが、ナチョ自身によるゴールドベルクのソロに始まり、実に多様な踊りが次々と登場し、バッハが古楽にも現代音楽にも聞えて新鮮だ。さらに女性をチェロに見立てて弾く、オケごっこをするなどユーモアもあれば、感情表現、コンテンポラリーの抽象性などさまざまに楽しめる。そして何よりもロマンティスムが漂う美しい舞台だった。
一転して神村恵のカンパニー旗揚公演は、無駄な動きを排して日常やシンプルな動きを追求する。女性ダンサーたちが、重なり交錯し走り回ると、抽象的なのに、個々の身体と動きがリアルに立ち上がるという希有な体験をする。まさに一つの「体の発見」だ。これまで執拗に踊りの立ち上がる瞬間を一人、孤高ともいえる形で、ソロによって追求してきた神村だからこそなしえた舞台に、強い拍手を送りたい
志賀信夫