大野一雄、芥正彦、マルドロール

大野一雄百歳記念舞踏会にはありえないメンバーが集まり二日間豪華な競演・饗宴だった。
一日目は特に上杉満代。空間を抽象的に使いながら具象的に踊る身体は大野一雄のある動きを彷彿させるのみならず上杉の内部からの止むに止まれぬ表現が染みだし見事だった。さらに麿赤児ジャニス・ジョップリンサマータイム、名曲のパワーに負けない渾身のといっていい踊りで思わず涙が噴出した
二日目は高井富子。七十過ぎた小さな女性が僅かに動く。それがでかいホール一杯に広がる。素晴らしい舞踏家の力だ。一番後ろ近くで見ながら感動していた。そして音をぶったぎって無音で踊り、また音が入るシンプルな演出も効果的。虚飾ない舞踏がそこにあった。
終わって秋葉なつみさんの死を知った。ブラジルの楠野ファミリーとして南米に舞踏を広めたプロデューサーだ。優しく熱い人。2008年の舞踏を含めた国際フェスに尽力していた。本当に残念だ。御冥福をお祈りします
マジ涙を押さえて関内のライブハウス、クラブ24に。あの、伝説の芥正彦がロートレアモンの『マルドロールの歌』をやるのだから、見逃せるわけがない。灰野敬二のノイジーなギターのなかで激しく語り叫ぶ。少年マーヴィンと天皇裕仁を重ねて宙に投げ飛ばして殺す発想は、いま新に強い意識が必要なことを感じさせて刺激的だった。二十代の何人がヒロヒト天皇をイメージするかはともあれ。芥健在。ヨコハマが荒ぶった

志賀信夫