大橋可也はやはり凄いよ

吉祥寺シアターでマチネとソワレ一日だけ。新人の宝栄にバケツを被せて首を振らせる、古舘の一方向の動きのリフレイン、ミウミウと皆木のデュオなど、それぞれ印象的だが、圧巻は垣内友香里と神村恵のコンビ。スキンヘッドの垣内と普段着の神村が観客席にいて、垣内の手が執拗に這う生の映像が舞台に映しだされる。やがて絡み争い、舞台からさらに劇場の外まで行き追い掛けたりするのを、ビデオが追う。技法は新しくないが、丁寧かつ濃密に作ったテンションが素晴らしい。ダンサーの身体もしっかり感じられ、音楽も映像も効果的だった。二人は自分のグループも率いるが、ここではダンサーに撤して大橋の世界を担った。それぞれの個性、個の物語を生かしながらも、この部分が強いためにバランスが難しく、冒頭の映像など、前半にパワーが集中した感があるが、これを傑作と呼ばずして何を呼ぼう。
志賀信夫