日本画展から濡れる肉体へ

横浜美術館で俊英による日本画?展。春の都現代美術館と松井冬子だけかぶっているが、違う作品で可能性を示した。中央に展示された横長の大きい作品は、森のような空間の裂け目から、水の溜まる廃墟のような暗い空間を差出し、見たことのない感覚にひきつけられた。中村ケンゴはモンドリアンとも見える間取り図作品でアニメキャラの記号化からさらなる展開を見せる。小瀬村真美は日本画世界を映像でというアイデア勝負。しりあがり寿は一室まるごまと模造紙で落書き的空間という戦略。なかで中上清の不思議な月と闇のディテール、素朴な藤井雷の封筒手紙絵巻に説得力があった
いやな予感とともに相鉄上星川に向かうと、雷、嵐で大野舞踏研究所に着いたときにはずぶ濡れ。大野一雄の舞踏写真集「秘する肉体」の出版記念会。写真家や協力者、批評家など百名ほどが集まった。47名の写真家による写真集という類のないもの。絵になるからこそ写し取れない舞踏家の踊りの魂がそこにある。刊行委員長の細江英公はさらに秋、撮りためた大野の写真集を刊行する。それは土方巽を撮った細江の代表作「鎌いたち」と対をなすものだという
写真は、父の写真集とともに踊る大野慶人
志賀信夫