ロシアの新作映画『イタリア人』(高橋匠美)

ペテルブルグ在住の高橋匠美さんから最新ロシア映画評が届きました。

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   ロシア映画『イタリア人』を見て
                    高橋匠美
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 ロシアの新作映画「イタリア人」を観た。
 映画監督はアンドレイ・クラブチュークで、この作品はオスカーを受賞した。製作はサンクトペテルブルグの映画会社「レンフィルム」。ちなみにモスクワの映画会社の名は「モスフィルム」である。ペテルブルグの映画館の数はおそらく15ぐらいだろう。
 主人公はコーリャという孤児院にいる少年だ。年齢は6、7歳だろう。イタリアから優しそうな夫妻が訪れ、コーリャは彼らと共にイタリアで生活することが決まった。その日から、コーリャのあだ名は「イタリア人」となった。
 ある日孤児院に、すでに引き取られてしまった友達の母親が訪ねてくるが、彼女は追い返されてしまう。そして、でかける途中でコーリャは彼女と会う。彼女は自分の息子のことを聞く。彼女は生活が大変で育てることができなかったが、息子のことを忘れたことはなかったと言う。そして、こうしてやっと迎えにくることができたが、もう遅かったと嘆く。それを聞いたコーリャの心は揺れる。その日から、彼の母親さがしの秘策が始まった。
 ロシア版『母を訪ねて三千里』とでもいうのだろうか。とにかくコーリャの根性は並じゃなく、観ていて何とか彼を助けてあげたいと思った。あの小さくて、無力な少年コーリャが困難に勇敢に立ち向かっていく姿には、涙せずにはいられなかった。
 『イタリア人』はアメリカ映画とは違い、質素だが素朴で心温まる作品だ。この映画ではロシアの田舎町の様子もよくわかる。近年のロシア映画は昔よりも良い作品が減っているそうだが、この作品はとても良いと、ロシアの友人達も口をそろえていた。ロシア映画では、華やかではないが、個性があり、味のある俳優が多い。
 それにしても、ロシアの映画館では80%がアメリカ映画の上映だ。ロシアの若者にもアメリカ映画はとても人気があるが、こちらとしてはどっぷりとロシアの世界に浸りたいものだ。
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◆プロフィール
(たかはし・たくみ)
1981年北海道小樽市生まれ
1997年ロシア国立ワガノワバレエ学校でリューボフ・クナコワ、
   ナタリア・ドゥジンスカヤに師事
2004年ペテルブルグ国立ヤコブソンバレエ研修生
2005年レニングラード国立バレエに研修生
   エフゲニー・コスチレワ(クチュルク)に師事
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なおバレエ評
「キーロフバレエ「放蕩息子」「Reverence」「エチュード
 Ballet report from Russia vol.1   高橋匠美
を舞踊批評家協会のサイトに掲載しました。こちらもどうぞ
http://blog.goo.ne.jp/dcsjp/

この映画については
http://www.saturn.dti.ne.jp/~rus-eiga/news/index.htm