◆種村季弘さん逝去

8月29日、種村季弘さんが亡くなった。
以前から入退院を繰り返していた。

数年前にバー・デスペラで囲む会が開かれて、お邪魔したことがある。
そのときは矢川澄子さんがいらしていて、絵本を頂戴した。
その矢川さんはもういない。

一昨年だったか、世田谷パブリックシアターで舞踏のレクチャーがあり、
元藤菀子さんとの対談の形でレクチャーが進み、終って少しお話しした。
その元藤さんももういない。

高校生の終わりくらいから、種村さんの翻訳、作品は熱心に読んできた。
グスタフ・ルネ・ホッケの『迷宮としての世界』(美術出版社)は矢川さんとの共訳で、
当時バイブル的にひもといていた。そして同じく『文学におけるマニエリスム』(思潮社)も待望の邦訳だった。
また『ドラキュラ・ドラキュラ』(薔薇十字社)は、吸血鬼小説アンソロジーで、
種村さんのエッセイとともども愛読した。『アナクロニズム』や『錬金術
パラケルススの世界』『詐欺師の楽園』などなど、文章の正確さ、タイトな美しさが
好きだった。近年は散歩的エッセイも面白かった。

お身体が大変といわれながらも、最近も種村セレクションの映画上映会とトークがあり
朝日新聞にも、たぶん口述筆記の書評が載っており、まだまだお元気と思っていた。
まだ71歳。本当にまだまだ活躍される人だった。残念でならない。
ご冥福を心からお祈りいたします。            志賀 信夫

朝日新聞の追悼記事
http://www.asahi.com/obituaries/update/0902/001.html