横滑ナナ、鍵田真由美、石井智子

★10月27日
中野テルプシコールで、小野由紀子改め横滑ナナによる舞踏ソロ
下手奥のアルコーブから差す逆光に座る裸身が徐々に浮かびあがる。後向きの全裸の背中は翻り、やがて立ち上がり、ゆっくりと上手手前に向かって歩む。これか横滑が自らに課した踊りの中心。白塗りの裸身は白粉が汗で時折輝く。頭上には巨大な紙のオブジェ、山上浩太郎の作った何かの体のようなそれが、時折揺れ動く。腰を折り気味で負荷をかけて歩む姿は素晴らしい。あとは手の所在だ

★10月28日
フラメンコの鍵田真由美・佐藤浩希による代々木上原の小スペースでの公演。サックス、ギター、パーカッションの音はフラメンコ・フュージョン。ジャズ的なアドリブが展開するなかで、カンテ瀧本正信のシンプルな声が生きる。曲や舞台はなかなか複雑な構造で新たなものを産み出そうという意欲が感じられた。オリジナルも面白いが、この編成だとチックコリアの曲が踊りにも合うようにも思う。サンバ系だがそれにフラメンコは面白いのではないか。最後のリフレインコードの曲はかなり盛り上がり、興奮した。鍵田・佐藤ペアは情熱的で、間近だとまた迫力。こういう楽しめる舞台は歓迎する
★10月29日
石井智子はゲストにディエゴ・カラスコを迎えて、新宿文化センターで『エル・コンパス』。ディエゴは独自の世界を作るいわばフラメンコのシンガー・ソングライター。溢れる情熱が迫ってくる。バイレのエル・フンコはパーカッシブな世界が魅力。石井の冒頭の活人画から全体に美しく見せる演出、そして群舞も構成されて見事。後半はディエゴとの絡みを中心にライブコラボのパワーと楽しさ。浦島太郎の曲を使うアイデアもいいのだが、最後にその曲が残ってしまうと、スペインの余韻が消えてしまうかもしれない
だが、二日続けてフラメンコを見て、あらためてその楽しさを実感した
★写真はスペインの空?いいえ中野ですわ
志賀信夫