タイタス、ジョバン、ダイク他

★10月2日
ルーマニアの劇団ブランドラによるハイナー・ミュラーの『解体・タイタス・ローマの没落』は衝撃的だった。シェイクスピアで最も残酷といわれる芝居『タイタス・アンドロニカス』をミュラーが解体しようとしたが、物語のインパクトは強い。犯され舌を切られ両腕を切断された女性。歴史の中の抗争と恨み、民族差別などが浮かび上がる
ハムレットマシーン』とちがい元をよく知らないからどの程度解体しているかわからないのだが、いい舞台だったことは間違いない★10月5日
ジネット・ローランの作品は三方を半透明の幕で覆い、ホリゾント裏のパーカッションがライヒの曲を演奏し、それに乗せて男女が踊るというシンプルな構造だが、なかなかスリリング。生音の緊張感のみならず、最初はモノトーンな踊りが次第に解体的要素を強め、熱を帯びるさまに共感した

★10月6日
ジル・ジョバンのトリエンナーレの舞台は面白い。舞台を包むサウンドのなかで踊る二人の女。やがてぬいぐるみが絡む。どうして馬のぬいぐるみと長い棒か?TH草書の次号に書いたので、ここではそれだけ
★10月8日
ヤヌーク・ファン・アイクの作品は、観客に体を突き付けコミュニケートをはかる。最初は数メートル四方の舞台を観客席が取り巻く。やがて少しずつダンスが観客を侵犯しはじめる。観客の椅子の下から退場するのを契機に、観客に触れることが許容され始める。顔を近づけ時にはもたれかかるなど、近さは共感を生み始める。そして椅子を取り払い立つ観客の間を縫い、四人があちこちで踊る。スポットが当たる場所で絡んだりソロ、観客を巻き込むなど、考えられた演出とユニゾンの動きも魅力的。観客を交えるエンディングも美しい。素晴らしい
★写真は青山の交差点で分離帯に乗り上げた車。この位置の分離帯は珍しいか


志賀信夫