「群々」は新しい世界を作れるか

ガラスごしに下を見つめる観客。そこでは白い服を着た男女が転がり倒れ重なり叫ぶ。動物園か水族館の生き物を眺める感覚で舞台はいつしか始まる。やがて観客は舞台に導かれ、光のスポットが示す数ヶ所で、彼らの動きを間近に見る。時には、「○さん死んでいる」といった台詞も混じりながら、体を感じさせる動きや踊りが展開する。
「群々(むれ)」は岩渕貞太、関かおりなどダンサーら七人によるグループで、今回浅草のアサヒアートスクエアのレジデンシャルとなり、リサーチ公演を行った。いずれも山田うんや大橋可也などの舞台で活躍したり自ら主宰したりするダンサーらで、動きにためらいがなくいさぎよいパワーが魅力。手を相手の口に差し入れたりと、男女や男男の絡みも時にはエロスを背景に身体の関係性を意識させるもので、よく考えられているし、楽しくみることができた。特に岩渕と長谷川寧の絡みはなかなかかっこいい
ただやはりこれまでの日本のコンテンポラリーダンスの動きや展開を超えて、新しい世界を感じさせるということではない。リサーチ公演ということで、探っていく意図だが、そこには観客も含めて新たな作品を模索しようというもの
共同での作品づくりはなかなか難しく、さらに外部という視点を入れると困難たろうが、その努力と意欲を買いたい

志賀信夫4-B