若松美黄.太刀川瑠璃子.及川廣信

筑波大学教授、女子体育大学教授、舞踊学会長などの肩書きからは信じられないほど、自由な感性を感じるのが若松美黄だ。
それもそのはず、五十年代は前衛舞踊家として土方巽の舞台にも出演し、当時は土方よりも強い光を放っていた。宙ぶらりんになる舞台や瓶を男根に見立てるなど、過激なものもあったらしい
埼玉芸術劇場での29日の舞台には観客がホール一杯。展開するのは蝸をテーマにしたコミカルなもの。冒頭はピナバウシュを思わせる群舞、それが日本的民衆踊りとつながる不思議な作品。ゲストの平山素子は自在な動きでさすが、若手男性も時折冴えを見せたが若松のダンスも独特で、自由な広がりを感じた。
●太刀川瑠璃子は日本のバレエを担ってきた一人。小牧バレエのプリマとして活躍後、意欲作の多いスターダンサーズバレエ団を設立し引っ張ってきた。スタダンの公演は太刀川の八十歳祝いとなった
●及川廣信は知る人ぞ知る。パリからマイムを日本にもたらし、大野一雄と稽古をして舞踏創世期に立ち会い、後に勅使川原三郎を教えた、舞踏とコンテンポラリーダンスのルーツともいえる伝説的存在だ。土曜日はキッドアイラックで久しぶりのパフォーマンス。大串孝二の足場のような美術もよかったが、及川の動きは大野に共通する素晴らしいもの。圧倒された。
●若松は七十三、太刀川は八十、及川も八十を超えている。はからずも三人を舞台で続けて見たが、表現者の情熱は永遠だと感じるいい機会だった
志賀信夫4-B