境野ひろみ、いい舞踏家だ

シンプルに踊って舞踏を成立させられる舞踏家が少なくなった昨今、境野ひろみは特異な存在だ。
舞台中央に立ち僅かに手先を動かす冒頭でまず引き込まれる。さらに奥の黒台に横たわる姿からゆっくりと頭と手足下半身をもたげる美しさ。笑うと老魔女にも童女にも見える。曽我傑の音楽も見事に合いアンコール的な床掃除はアスベストと仕事を掛け合わせる。素朴に奇妙な世界を作れる境野。次の舞台も楽しみだ
志賀信夫